自費ベッドはなぜ赤字?泣きサービスのコスト試算と業界の悪循環【バルクケア流】

介護

こんにちは、バルクケアです。

今回は福祉用具業界の“あるある”のひとつ、**「軽度者の自費ベッド問題」**について、数字を交えて掘り下げてみます。

利用者や家族からすると「保険で借りられないなら自費で」とシンプルな話ですが、現場からすればこれは大きな矛盾を抱えたサービスです。

なぜなら、**自費ベッドはほぼ確実に赤字になる“泣きサービス”**だからです。

軽度者はベッドを保険で借りられない

介護保険制度では、特殊寝台(介護ベッド)は原則として 要介護2以上 から対象になります。

要支援・要介護1でも「特例給付」が認められる場合はありますが、かなりハードルが高い。

そのため、多くの軽度者がベッドを希望すると「保険では無理なので自費レンタルで」という流れになります。

ここで問題なのは、自費レンタルの価格設定です。

自費ベッドの相場と利用者の誤解

本来であれば、介護ベッドのレンタルには相応のコストがかかります。

ベッド本体価格は数十万円 搬入・設置・撤去に人手が必要 定期的な点検・メンテナンスも必須

にもかかわらず、「保険なら1割で1,000円前後だから、自費も同じくらいで借りられるはず」と考えがちです。

そして実際に業者もその水準に合わせて、月1,000〜2,000円程度で提供しているケースが多いのです。

この時点で、業者はすでに自分の首を絞めています。

自費ベッドのコスト試算

では、具体的にどれくらい赤字になるのか。

シミュレーションしてみましょう。

初期対応

搬入・設置(2名体制+移動費):約6,000円 初期点検・書類作成:1,000円 ➡ 合計:約7,000円

月次コスト

定期メンテナンス(訪問30分+移動):約3,000円 保険・消耗品・事務コスト:1,000円 ➡ 合計:約4,000円/月

撤去時

撤去・搬出・清掃・点検:5,000円

1か月だけ利用した場合

初期7,000円+月次4,000円+撤去5,000円

➡ 合計16,000円のコスト

収入:自費1,500円程度

➡ マイナス14,500円

6か月利用した場合

初期7,000円+月次(4,000円×6か月=24,000円)+撤去5,000円

➡ 合計36,000円のコスト

収入:自費1,500円×6か月=9,000円

➡ マイナス27,000円

赤字構造が生む悪循環

数字で見ても分かる通り、自費ベッドを現状の相場で提供すると完全に赤字です。

そしてこれが業界全体に広がると、以下の悪循環が起こります。

業者間の価格競争が激化 人件費やメンテナンス費用を削るしかなくなる
結果として安全性やサービス品質が低下 利用者の満足度も下がり、業界全体の信頼が揺らぐ

つまり「利用者のために安く提供する」という建前が、
長期的には利用者の不利益につながるのです。

適正価格を守ることが業界の未来を守る

ここで大切なのは「利益=悪」という誤解を捨てることです。

介護業界では「利用者本位だから儲けを考えるのはよくない」という風潮がありますが、これは大きな間違い。

利益が出なければサービスは継続できず、結果的に利用者が困ります。

バルクケアの提言

  • 自費サービスは堂々と適正価格を設定するべき
  • ケアマネも「安い業者に振ればいい」ではなく、現実を利用者に説明する責任がある
  • 利用者・事業者・ケアマネが“三方よし”の関係を作らない限り、この悪循環は止まらない

まとめ

軽度者のベッドレンタルは、制度の隙間を埋める重要なサービスです。

しかし、赤字前提の“泣きサービス”を続ければ、業界全体が疲弊し、最終的には利用者も不利益を被ります。

だからこそ必要なのは、

  • 利用者本位だけでなく「事業者が続けられる仕組み」を守ること。
  • 利益を出すことは、利用者を守ることにつながる。

これが、現場で10年以上働き続けて見えてきたリアルです。

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